interview社員インタビュー

Interview 05

ESG
× オルタナティブ投資

Interview 01

オルタナ投資で「一歩先」行くESGの取り組み

気候変動や人的資本に関する「ESG」の取り組みは、投資運用の世界でも企業価値を大きく左右する重要テーマ。インフラなどに潜むESGの機会やリスクを把握するのは難しい作業だが、当社はオルタナ投資専業としての「総合力」で、業界の半歩先、一歩先を進むべく取組を進めている。現場メンバーに、課題とやりがいを聞いた。

松尾 美久 Miku Matsuo / リート運用部

松尾 美久 Miku Matsuo / リート運用部

2021年入社、大手不動産管理会社出身。
オフィス、レジデンス、物流施設、商業施設を対象とした総合型の私募リートの物件マネジメント業務を担当。具体的には、物件運用計画策定、リーシング戦略策定、修繕工事実施方針策定、ESG取り組み推進等の業務に加え、投資家、レンダー等への報告業務のサポートも担当する。

本間 仁 Hitoshi Honma / インフラ・アセット投資運用部 兼 グローバル投資運用部

本間 仁 Hitoshi Honma / インフラ・アセット投資運用部 兼 グローバル投資運用部

2020年入社、都市銀行出身。
国内外インフラファンドの投資運用業務およびインフラ分野にかかるESG統括業務を担当。具体的には、投資対象ファンドのスクリーニング、デューディリジェンスと、これらを踏まえた投資判断、及び投資先に対するエンゲージメントやESG取組報告を含む、受託資産のモニタリングならびに投資家報告等の業務を担当する。

佐藤 友理 Yuri Sato / 総合企画部

佐藤 友理 Yuri Sato / 総合企画部

2022年入社(DBJから出向)、責任投資委員会等の会議体の運営や内部統制システムの運用管理高度化業務に加え、ESGやサステナビリティに関する取り組みを主に担当する。

議論尽くし、自主性重んじる企業風土

まず現在の所属とお仕事の内容についてお聞かせください。

佐藤:
私は日本政策投資銀行(DBJ)からの出向で、2022年4月から総合企画部に所属しています。責任投資委員会など会議体の運営や内部統制システムの運用管理など、業務は多岐にわたります。本日のテーマであるESG、サステナビリティに関する取り組みも担当しています。
松尾:
私は2021年11月に入社し、不動産投資本部のリート運用部に所属しています。「DBJプライベートリート投資法人」を運営するチームに在籍し、具体的には、この私募リートのポートフォリオ約25棟の物件に関するマネジメント業務全般を担当しています。
本間:
私は2020年7月に入社し、現在はインフラ・アセット投資運用部とグローバル投資運用部に所属しています。国内外インフラファンドへの投資運用担当で、2020年12月からはサステナビリティ推進チームにも所属しました。ESGについては佐藤さんが所属する総合企画部の支援も受けながら、インフラ・アセット投資運用部のESG取組方針策定や顧客宛ESGレポートの作成業務などを進めています。

どんなところに今の仕事のやりがいや魅力を感じていますか。

本間:
私はインフラファンドに投資する仕事をしているのですが、その際に投資先ファンドや最終投資先案件の詳細に踏み込むケースがあります。そうした中で行うGP(無限責任組合員)の運用マネジャーや投資家との議論に、個人的にはやりがいを感じています。また、サステナビリティ関連ではデータの収集や開示方法が確立されていない部分も多く、どのようにヒアリングすればいいのか、どのように投資家にレポートすればいいのか、社内でも議論しながら前に進めています。
松尾:
不動産投資の仕事そのものが面白く、やりがいがあるのですが、当社に入社してからより強い責任感を持って仕事に向き合えるようになりました。理由は自主性を重んじる社風にあるのだと思います。仕事に対する意見があればチーム内で議論を尽くして、合意を得られれば任せてもらえる。議論は「できない」ことを前提にしたものではなく、うまくやるためにどうするかをみんなで考える「性善説」に立ったものです。互いに支えあう組織の中で、自分の力を発揮できていると感じています。
佐藤:
確かに当社は転職者が多く、異なるバックグランドでの多様な経験を踏まえ、それぞれがプロフェッショナルの自負を持ちながら働いているように感じます。知見やスキルを惜しげもなく提供しあい、吸収しあう好循環が生まれていると感じます。2022年10月にもサステナビリティ関連の取り組みの一環として企業理念をテーマにした全社研修を行いました。当社は三本部制で、本部内は風通しが良くても本部間交流の機会が少なかったため、垣根無く意見を交わせる場を創ろうと企画したものです。忙しい中でこうした研修をすると「面倒くさい」と感じる人が多いと思うのですが、積極的に参加し活発に議論する社員が多いことに驚きました。当社の良さを再認識した経験でした。

本間さんと松尾さんに伺います。入社する前はどんなお仕事をされていて、何がきっかけで当社への入社を決めたのか教えてください。

本間:
当社に入る前は都市銀行に勤め、支店勤務後、調査部門で業界調査などを担当していました。鉄鋼や化学業界を調べる中でインフラに興味を持ち、その中でファンド投資の経験を得ることが出来まして、専門として極めたいと思うようになったのが転職の理由です。当社に決めたのは採用面接ですね。面接時間の8割くらいかけて、業務内容を丁寧に説明してもらいました。そんな会社はほかにはなかった。面接官の皆さんの人柄も良く、働きやすい会社だと思ったのが入社の理由でした。先ほど松尾さんも仰っていましたが、助け合うのが当たり前の職場で、議論にかける時間も長い。
松尾:
前職でも一貫して不動産投資に関わる仕事をしていました。プロパティマネジメント(PM)、アセットマネジメント(AM)両方の経験があり、スキルを積み上げることができて、とてもやりがいを感じていたのですが、オフィスの内装設計部門という全く畑違いの仕事に異動になったのが転職の理由でした。当社に決めたのは、私も採用面接でした。他社も受けましたが、面接の回数がダントツで多くて計10人くらいの方と話すことができました。お話の中で入社後の仕事をイメージできたことが大きかったです。どんなチーム構成で、どんな役割を担うのか。入社してからの印象は先ほど申した通り、やりがいを持ってリート運用部の仕事に打ち込めています。
議論尽くし、自主性重んじる企業風土

全社研修で「自社の強み」を徹底討論

ここからは本題のESGの取り組みについて。佐藤さん、全体像を教えてください。

佐藤:
投資家の利益の最大化を目指すために、もはやESGの取り組みは不可欠です。投資対象の市場価値には、売上や利益などの財務的な要因だけでなく、気候変動や人権問題などの非財務的な要因も中長期的に大きな影響を与えるからです。当社は2016年に、環境問題(E)、社会課題(S)、企業統治(G)の観点を投資判断に組み込むことなど「6つの原則」を明示したPRI(責任投資原則)※に署名しました。それ以降、全社を挙げてサステナビリティの取り組みを推進しています。社長がヘッドを務める「責任投資委員会」で活動の指針を作り、社内全部門のメンバーで構成する「サステナビリティ推進チーム」(以下、サステナ推進チーム)で情報を共有しながら社内横断的に取り組んでいます。
最重要ミッションは、社会課題の解決を通じた「投資家の利益の最大化」です。当社の経営理念にも通じるフィデューシャリー・デューティ(FD、受託者責任)やスチュワードシップ責任をしっかり理解した上で、当社の強みを生かしながら、社会課題解決につながるビジネスを創出していかなければなりません。2019年に企業理念を策定する際に全社で、当社の強みを生かして何ができるのかを徹底的に議論しました。策定後も年に1回、先ほども紹介しました「全社研修」を実施しています。日頃は異なる領域で仕事をしている社員が数人ずつのチームになって会社全体の進むべき方向性を考えます。昨年10月の研修は「当社の強みとは何か」「どのような社会課題を解決していくべきか」をテーマに議論しました。
  1. ※2006年に国際連合の提唱により策定された。国内では2015年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が署名し、注目を集めた。

全社研修を実際に受けてみて、どんな印象を持ちましたか。

松尾:
私は全社研修では、グループのファシリテーター役を務めながら議論に参加しました。まず当社の「強み」としてはDBJグループの認知度や信用力を挙げる社員がほとんどでした。そしてオルタナティブ投資に特化している事業形態は他社にはなく、「新しい事に取り組んでいる会社」というイメージが業界内での差別化につながっているという意見も出ました。「どんな社会課題を解決していくのか」については、当社のESGの取り組みそのものが、お客様のESGの取り組みを促進しているという意見もありました。例えば不動産投資の対象物件の環境性能を評価する「DBJグリーンビルディング認証」という認証制度があるのですが、認証取得にあたり個々の物件の管理担当者に水光熱使用量などを聞き取ります。「なぜ必要か」という疑問に対して、ESGに取り組む意義を説明する。そのことがきっかけになってESGの概念が社会に浸透し環境性能の高い不動産の価値が上がるわけです。
不動産投資の世界では、ESGに関する取り組みとして、例えば物件の省エネを進めたり、エレベーター内に防災備品を設置したりしますが、前の職場などでは「良い事だからやっている」といった、ぼんやりとした感覚で進めていました。当社はサステナ推進チームでESGの取り組みを体系化して全社員に浸透させていて、「何故、その取り組みが必要か」という意識が現場まで浸透していると感じています。その点、不動産業界でも半歩先、一歩先をいく取り組みができているのだと思います。
本間:
私のグループでも「当社の強み」については「DBJグループの信用力」という意見が出ていました。そのほか「コミュニケーションが円滑な風通しの良い組織」などを挙げる社員も多かったです。「社内の知見を集めて課題を解決したり、良いものを創ったりできる」という声もありましたね。私もファシリテーターを務めていたのですが、私が何か工夫をしなくても、発言が途切れることがないのにびっくりしました。普通はこうした研修は沈黙する時間ができてしまうもので、「ファシリテーターは大変だな」と思っていたのですが、逆に楽しかったです。議論しやすい雰囲気が皆さんにあるのだと感じました。
佐藤:
「より良いものを創りたい」というマインドを持った社員が多いのだと思います。先ほど松尾さんが「不動産投資部門でのESGの取り組みが体系化されている」とコメントしていましたが、それも物件の環境価値を高めれば、それが社会的な価値につながり、長期的な投資家の利益に資する、という流れを理解しているからこそ、当たり前のようにできるのだと思います。
全社研修で「自社の強み」を徹底討論

強まるESGの開示要請

皆さんは仕事を通じて、ESGの外的環境への変化をどうとらえていますか。

本間:
投資家の間ではESGを長期的な視点で投資価値を高めるための活動ととらえ、定量的にわかりやすく説明してほしい、という要請が高まっています。今年もファンドに組み込まれた個別案件の温室効果ガス(GHG)排出量を、開示してほしいとの要請がありました。インフラの排出データは不動産に比べるとデータ制約が大きい。例えば風力発電の部材の生産工程で排出したGHGの算出方法や開示範囲など、ルールが未整備な部分が多いのです。投資先のマネジャーと議論して報告書を作り、投資家が求めているデータなどを聞き取って補う作業を繰り返しました。「インフラ領域では国内で初めて提出してくれた」と投資家からお褒め頂きましたが、これが当たり前になっていくでしょう。
2022年末にロンドンに出張し海外のESG動向を調査しましたが、今後は環境だけでなく人権関連や自然資本関連の開示要請が高まっていくとのことでした。人権関連のトピックでいえば太陽光パネルの生産時に強制労働がないか、などです。欧州では環境分野でも排出量削減効果などを偽る「グリーンウォッシュ」※が社会問題となっているので、データに関しても第三者認証を得るといった対応がみられます。
  1. ※製品やサービスの環境性能を虚偽または誇大に開示する行為。
松尾:
不動産投資においても、不動産の環境性能を、より精緻に開示してほしいという要請がどんどん高まっています。当社としては環境性能を把握するだけでなく、評価・改善していく取り組みにも力を入れています。2022年には電気・水の使用量や廃棄物の排出量などを入力すると、海外を含む同種の不動産と比較できるプラットフォーム「Arc」を導入しました。データの信頼性を担保することも重要で、先ほど本間さんがインフラ分野での取り組みとして紹介した第三者認証は、不動産投資の世界でも当たり前のものになってきています。具体的にいえば私募リートのポートフォリオにおける電気・水の使用量や廃棄物の排出量のデータは、第三者機関が請求書などと照合してデータの正確性を確認しています。不動産はインフラに比べるとデータの取得が簡易ですので、こうした取り組みが発展しやすいのだと思います。
本間:
まさにオルタナ投資の中でESGの取り組みが最も進んでいるのは不動産領域です。インフラやPEは手探りの状態の部分も多いので、データの開示方法や投資家への説明の仕方など、先行している不動産分野の取り組みを参考にしながら議論しています。投資家はESGの取り組みをますます重要視していますので、身近に先行事例があるのは本当に助かります。当社はオルタナ投資の専業ですので、横連携がしやすいのだと感じています。
佐藤:
脱炭素などの取り組みが世界的に進む中で、投資の世界も「リスク」「リターン」の二軸ではなく、「サステナビリティ」を加えた3軸で考えていく方向にどんどんシフトしています。こうした流れの中で、投資の現場からESGやサステナ関連の問い合わせが殺到しているのが実情です。
強まるESGの開示要請

「不動産」「PE」「インフラ」の強みを持ち寄る

最後に佐藤さん、ESGの取り組みの今後の目標を聞かせてください。

佐藤:
運用会社においても、グローバルかつ長期的な視点を持って社会課題と向き合うことが必要です。不動産、PE、インフラと領域によって取り組み方は異なりますが、それぞれの業界の半歩先、一歩先を行く存在でありたいと思っています。それが当社らしさだと思いますし、ESGの取り組みを通じて「選ばれる運用会社」になりたいという思いが強くあります。そのためにも3つの領域の取り組みの良い部分を共有しあい、お互いを活性化できるような活動を展開していきたいと考えています。他方で、ESGの取り組み自体を目的とするのではなく、ESG投資を通じた社会課題の解決を目指しているということを忘れてはなりません。事業を通じて社会課題を解決しながら投資家の利益を最大化していく運用会社を目指したい。今年も秋には全社研修を実施します。新たに当社に入社される方々とも活発な議論をして、ESGに対する意識を共有していきたいと思います。
「不動産」「PE」「インフラ」の強みを持ち寄る